ワーク・ライフ・バランス座談会の開催

11月24日に、武蔵小山のキッズカフェにて、ワーク・ライフ・バランスの座談会を開催しました。

ワーク・ライフ・バランスが「毎日4時間睡眠でも大丈夫です!」といった
一部の物凄く才能と体力のあるスタープレーヤー的な女性のためだけではなく、
やる気のある幅広い層の女性ためのものになる必要があります。

スタープレーヤー的な女性の話がクローズアップされやすいなか、
女性たちが等身大でサポートし合い、進捗を報告し合い、
また、アイディアを交換するようなコミュニティを創っていきたいと考えています。

「社会が本当はどうあるべきなのか?」
をそれぞれが迷いなくビジョンとして描けるようになり、

「自分の感覚は間違っていない!」
「他の国ではそんな感じなのだ!」というプロセスを経ながら、
自分が個人的に取ることのできるリスクやアクションを考えていきます。

講師は、ワシントン DC 在住、米国政府認定NPO501(c)(3)取得Kizuna Across Cultures共同創設者・理事・代表のスメサースト文子さん。The Japan-America Society of Washington DCの「女性と男性が共に輝ける社会へ向けて~日本のワークライフバランス~」では、パネリストを務めていらっしゃいました。
https://www.facebook.com/303794524147/photos/a.10151237351559148.551421.303794524147/10154316886659148/?type=3
(文子さんのプロフィールはこちらへ。)

座談会テーマは、以下の通りです。

・アメリカの共働き世帯の現状
・アメリカから見た日本の働き方
・男性も女性も輝く社会に向けて何ができるのか?
・共働き夫婦の子育てしながらのワーク・ライフ・バランス
・男性の家庭参加・イクボス(育ボス)推進

<ブレインストーミング ~望ましい文化を形成していくために~>
・参加者の皆さんが実際の職場で取り入れられること
・社会の一員として、どのような視点を持ち、どのようなメッセージを発信・体現するのか?

 

まずは、座談会前の参加者の皆様の声を一部、ご紹介いたします。

「アメリカではどのような仕組みで社員のワークライフバランスを支援しているのかを知りたいです。」

「妊娠出産を期に退職した女性や、育休復帰前後で今の働き方に疑問を持ち、模索する女性に対して、強みを生かし、自分らしく働くスタイルを提案する個別コンサルティングをしています。
ワークライフバランスについても学びを深め、必要な方にこの座談会を紹介していきたいと思います。」

「開発販売の業務をしております。古い会社ですが、WLBについては積極的に取り組み始め、この度の2度の産休育休取得も、円滑に気後れすることなく進めることができました。
これから復職して3年間のブランクを挽回していく中で、子供達へ負担の少ない業務時間、急な呼び出しや欠席等で同僚に負担や迷惑を掛けながら、以前のような成果を上げ躍進することは難しいと感じています。
でも、私の中で家族が一番大切なので、限られた時間の中で自分のできる仕事を粛々と効率的に熟していきたいと捉えています。
若い女性社員が続々と産休取得し復職している中で、模範となるような存在でありたいと願っています。」

「他社の経営者の男性から「今の若い女性はずっとちやほやされていたいから結婚しても働きたいなんて言う。だから虐待が増えたんだ」と言われて唖然としたことがあります。
若い世代は少しずつ意識が変わり始めていると思うけれど、構造的に決定権の強い世代で意識の古い人がいるのはとてもツラい問題だと思います。
今の日本の問題は長時間労働がまだ美徳とされていることと、女性の賃金が男性に比べて低いことだと思います。
アメリカも長時間労働の問題はあると聞くけれど、家庭を大切にする考え方には差がありそう。
日本では、「子育てなんかしてる男は出世できなくて当たり前」と発言する知識人がいるぐらい。長時間労働をどう考えるのかについて、日本との違いがあれば聞いてみたいです。また、アメリカでの男女の賃金格差についても聞いてみたいです。」

「医療系の専門職の復職支援にチャレンジしております。特定の資格が必要な専門職では、常に人材不足の問題を抱えております。専門の教育を3年以上(大学、専門学校)にて学び、一定の実習期間をクリアし、卒業試験に通ると、国家試験の受験資格がもらえて、国家試験に合格することで、免許が与えられる資格です。そこまでして取った資格なのに、違う職種に就いたり、出産を機に現場から退いてしまう人が多いのです。そればなぜか…
1.仕事に魅力を感じていない。
2.労働環境が良くない。患者獲得のために夜間や土日まで診療を行うところが増えています。仕事で長時間拘束されてしまうことや、人手不足のため、現場のスタッフが多忙を極めているところも多くあります。
3.復職したいが、現場復帰に不安がある。日々進歩していく医療。最新の機器の使い方やその知識が必要であり、
また技術職として、手先の感覚や、視覚による判断、そして患者さんとのコミュニケーション能力が求められている仕事です。長年のブランクがあると、鈍ってしまった感覚を取り戻すことや、新たな知識を取り入れる手段を見つけることなど、現場復帰のハードルが高くなってしまいます。」

「平日の昼間開催だと子供と一緒に参加でき、保育園事情や育児に関して情報交換できる場にもなるから嬉しいです。育児をしていると、パパの力は絶大だと実感。平日7-8時に週2でいいから帰って来れる社会になって欲しいです。保育園も希望者は全員が入れて、働きたいママは復帰出来る社会になって欲しいです。その上で「社会に向けて何ができるのか」は興味深いです。」

「転職(公務関係)してから、以前の職場(外資系証券会社)よりも男性に囲まれて仕事をしていますが、男女の別を考える事が以前よりも少なくなりました。一方、子供を産むタイムリミットは以前より意識してます。その時に、社会的な環境への不満をそれほど意識しないのは、女性でも男性でも自分の人生どう生きて行くか個人の問題だからでしょうか…。色々な人種の方とご一緒すると皆んな個人がたくましいと感じます。」

「深夜ありの飲食店勤務後、アメリカのカリフォルニア州へ留学。旅行代理店を経て、現在、財団法人で勤務。現在の会社は、比較的休みを取りやすく、残業も月15時間程度。育休や産休、時間短縮勤務もとれる。しかし、休めるものの、仕事量の改善はなく、他の誰かが仕事を補填し、その分負担がいくので、不満はたまる。不満を述べるのは、大抵女性。男性は扱いがよくわからないので、丁重に扱いすぎの傾向にある。」

また、沖縄在住の研究者のママからも参加希望をいただいていました。
当日は残念ながらお会いできませんでしたが、ご意見をお寄せいただきました。

「アメリカ留学生活で自由で何事にもとらわれないスピリッツを手に入れたと自負していた(笑)私ですが、実は結婚、出産を通してこれまで感じたことのないほど昔からの慣習やジェンダー観、社会の制度というものに翻弄されているのを実感しています。
4年前、長男が生まれた頃、私は子どもがいても自立した女性でいたいという思いが強く、生後2か月頃からパートタイムで英語講師の仕事に戻りました。夫の両親が「まだ子どもが小さいのに可哀想」と感じていることは知っていましたが、子育てをおろそかにするわけでもないし、私には妻と母と仕事をこなすだけの器量があると信じていました。しかしながら、実際のところそれは簡単なものではありませんでした。まず保育園を探すことができませんでした。ほとんどの保育園は6か月からしか預かってくれないのに加え、私の住む地域の認可保育園はパンク状態で待機児童も多いとのことでした。そこでファミリーサポートを利用することにしました。

さて、それで万事うまくいったわけではありません。実は私にはもう一つの大学院生という肩書きがあります、博士号を目指して社会言語学の研究をしている途中なのです。認可保育園に申請するのに私の大学院生というステイタスは大きなネックになりました。
大学院生というのは大学生とは違って月〜金の1限〜4限といった時間割がありません。コースワークを終了していた私が大学に行くのは週に1度のゼミだけ、他の時間は文献を読んだりインタビューをしたり、データを分析したり論文を書いたりする研究の時間です。それは役所の求める週4日・1日4時間以上の「保育に欠ける」要件を満すと証明できないので「受理できない」と言われてしまいました。母親(あるいは父親)が大学や専門学校生であれば時間割を提出できるから受理できるけれども、大学院生は授業のコマ数が少ないので受理できない!?日本の女性研究者は11.6%と世界的に見ても少ないというのも納得です。それでもそこで諦めるわけにもいきません、「お母さんが大学院生というのは前例がないので」と渋る役所の方を説得して、1日、一週間、一ヶ月、半年、一年の研究計画やスケジュールを書き出し、指導教員に一筆書いてもらいついに受理してもらいました。そして1年半の長い時間がかかりましたがどうにか長男を預かってもらうことができました。

こうやって書いてみると一つの小さなストーリーですが、私にとっては人生を揺るがす大きな出来事でした。
生計を成り立たせるための仕事さえ出産を機に諦めざるをえない女性たちがいます、一方で子どもが小さいうちは子育てに専念したいと職場を去る女性もいます、どちらも大切で尊重されるべき選択だと私は思います。
役所が、あるいは沖縄や日本という社会が抱く母親像に私たちが当てはまっていくのではなく、私たちが私たちらしい生き方で子どもを産み育てられるように社会がサポートし合えるような仕組み作りが必要になってきていると思います。それを実現させるのは私たち女性なのかもしれません。5月に次男が生まれ、私はまた保育園問題に直面しそして未だに大学院を修了できずにいますが(笑)、一歩ずつ、私の選んだ道を私らしく歩いていけたらと思っています。私のストーリーに耳を傾けて下さったことに感謝いたします!ありがとうございました。」

次に、座談会の内容をご紹介いたします。

冒頭は、文子さんの自己紹介があり、以降、日本の現状、日米体験の比較と考察の順に講演いただきました。

①日本にいた頃は、女性の活躍が多い会社でも働いていたし、自分では考え方が割と進んでいる方だと思っていたが、米国に移住して仕事と出産と育児を経験し、自分が日本にいた頃に無意識にもっていた思い込みに気付かされた。

②ワークライフバランスや女性の活躍のために、インフラ面の改善も大事だけど、価値観や習慣をグッと変えるだけでも、
もっとみんながラクに楽しく仕事と仕事以外の自分の顔を両立できるようになるのではと思っている。

<日本の現状>

①日本の女性進出が遅れているのは、日本人女性が「弱い」からではないかと考える米国人も少なくないが、
文子さんは日本の女性がとりわけ勤労意欲や野心が低いとは思わない。

②日本の女性の就業率は50%以上。従前に比べると相当な変化且つ国際的にも遜色ないレベルであると認められるが、
他方、課長職以上の女性割合は依然低く、10.6%に留まっている(先進国では最低レベル)。米国は42%、欧州諸国は30%台、
日本周辺の国では、フィリピン38%、シンガポール31%、マレーシア24%と比較的高めで、日本よりも唯一低いは韓国(10%)くらいであった。

③近年の法整備状況を見ると、女性の社会進出や男性育児参加の追い風が吹いている。
2015年4月に(改正)次世代育成支援対策推進法が施行され、男性の育児休暇の取得や育児期間中の短時間労働に関するガイドラインが示され、又、女性活躍推進法により、女性課長を3割以上を目指す努力義務が企業に化せられることとなっている。

④参考として、文子さんがかつて勤めていた日本企業では、職層ごとに女性活用の数値目標があった。
女性の数が増えれば、女性にとって働きやすい環境が整ってくる。数値目標は大事。

⑤状況が改善しつつあることは間違いない。大切なポイントは、「(国際社会レベルに到達するために)如何に早く変化を起こせるか」あると認識している。

<日米体験比較>

◆従前(日本にいた時=7年前)に未来にワーキングマザーとなるであろう自分に抱いていたイメージ

①育児は基本的に女性が大幅に負担せざるを得ないもの。

②夫が少しでも手伝ってくれたらラッキー。夫に家事の面で文句は言わず、ちょっとでもやってくれたら感謝し、おだてて頑張ってもらわなければならない。

③子供はやはり断トツにママを必要としているものだから、生後一年くらいは育休をとって一緒にいてあげた方がいい。

④キャリアは少し我慢せざるをえない。「家庭の事情を仕事に持ちこむべきではない」中、自分の都合で周りに迷惑をかけているので、仕事させてもらえるだけありがたい。

⑤職場でも子連れで行く公共の場でも何かと肩身の狭い思い。

◆現在(米国在住)

①米国では産後2ヶ月で職場復帰するのが普通。文子さんも産後8週で保育所に子供を預けて、共同設立し代表を務めるNPOの運営を軌道に乗せる傍ら、別のパートタイムの仕事を掛け持ちし、フルに働く生活に復帰。職場で搾乳をして、冷蔵庫で保冷していた。

②文子さんは夫がイクメン(育メン)できる環境(夫の上司がイクボス(育ボス))にあり、夫と共に子育てに従事できたこともあって、仕事と育児の両立が予想以上にラクで楽しかった。

③米国は男性(育児中の父)の当事者意識が高く、近所にはパパ友の会もある。日本的な考え方だと、育児等の家庭の事情は、至極個人的な話であって、職場ですべきではないような雰囲気があるが、米国は「家庭の都合は個人の事情なので」という突き放す感じの雰囲気がない。出産や育児により想定外の事態が発生することもあるという自然な認識のもと、その影響を減らすために職場も社員が互いに対等にフレキシブル。

④文子さんは、出産直前は職場に相談し在宅勤務に切り替えてもらい、一方、出産の数日前まで仕事をした。

⑤子供の風邪の場合、保育所に子供を引き取りにいくのは常に文子さんではなく、夫と電話で相談し、夫が15:00に子供を迎えに行って、帰宅後は在宅勤務で対応するということもある。

⑥夫婦それぞれ遅くとも6時には退社。子供を迎えにいかないほうが、晩御飯を作る。子供を寝かせたあと9時ごろから少し家でPCを立ち上げて仕事をすることもある。

⑦文子さんの夫の体験:転職後2ヶ月で2週間の育児休業を快く取得させてもらった。自身は子供がいない女性の上司が、子供が小さいときにNY出張を依頼して申し訳ないと発言している。

⑧夫の会社は360度評価で、「あなたの上司は、家庭の都合で仕事を抜けなければいけないときなど相談をしやすい上司か?」と確認する設問がある。

⑨ちなみに米国では残業が続くと、時間内に仕事が終わらないならばアシスタントが必要ですか?といわれてしまう(悪い評価)。

⑩文子さんは従前は、子供は絶対に母を必要としており、生後間もなく預けるのはかわいそうだと考えていたが、今では、保育所通いは大家族に育ててもらっているようで、かつ子供の感情も安定しており、考えが変わったとのこと。

<日米比較(考察)>

①日本でありがちな問題に、育児・家事は女性の仕事という考え方がある。又、数年に及ぶ育児休暇・時短勤務が選択肢として存在するのは良いことなのかもしれないが、それが女性のキャリアを積むこと、ひいては女性の要職への登用の妨げにならないとは言えないのでは。米国では育児を理由とする時短の例はほとんど聞かない。

②『A:子供が二人以上いて、B:近くに両親が住んでいない、C:共働き夫婦』でも、希望とあれば仕事のペースを緩めずに仕事と家庭を両立してゆける環境がそろったとき、真に女性の社会進出が進む。それは、家庭を持たない方にとっても、男性であっても、仕事以外の顔や生活を充実させることのできる、真にワークライフバランスのある人間らしい社会。

③文子さんの考えとしては、保育所やベビーシッター等のハード面の充実も重要であるが、長時間労働の是正やテレワークの推進等のソフト面の改善をすべき。女性の問題として捉えられることが多いが、男性のサポートをするのが肝要。男性を早く家に返す為の運動を推進すべきと考える。文子さん夫婦の場合は、18:00~21:00をプライムタイムと位置づけ、夫婦で家のことをやっており、無理なく家庭と仕事の両立が可能とのこと。

④そもそも米国では、政治家や弁護士やコンサルタントなどの一部の職種を除けば、営業職であっても残業がないのが基本なので、18:00に帰宅できる。独身男性も婚活をしたり、仲間と食事に行ったりしている。
特に会議の効率的な運営についての意識が高く、他人の時間を無為にしないようにしており、無駄に出席者の多い日本の会議とは性格を異にする。米国の場合、仮に自分が貢献できそうにない会議に同席を依頼された場合は「貢献できる要素があまりない」と意思表示をし、より成果を出せる仕事に集中するような文化さえある。

⑤専業主婦を前提とした企業文化は根強いものがあるが、日本でもにわかに「イクボス」という言葉が紹介されているので、これがヒットすると良いと思う。「イクボス」とは、職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことを指します(対象は男性管理職に限らず、増えるであろう女性管理職も)。参考:ファザーリング・ジャパン(NP)

⑥但し、米国は日本ほど育児休業制度は充実しておらず、育児休暇となると普通は無給。大企業等で有給であったとしても2ヶ月程度が上限の模様。又、都市部は保育費用が高く、月1600ドルもかかるとのこと。それでも複数子供がいて、フルタイム共働き夫婦が多いのは、産前と出産後の、職場のフレキシビリティが、家庭(および個人の私生活)を尊重する文化からくる習慣として根付いているからではないか。

<グループワーク>

(1)子供が小学校に入学して以来、非常に肩身の狭い思いをしている。PTAや保護者会は専業主婦(母が家にいる)を前提に運用されている。

(2)日本が男性の育児参加しづらいのは、長時間働いて(「汗をかいて」)姿勢を見せることで評価を得ようとする、又は評価しようとする風土があるから。

(3)育児の為に休業したり、短時間労働にすると、職場周囲の人たちの反応は「あきらめ」のような状態(仕方がない)。米国の話しと比較すると、職場の反応は、あまり能動的(「子供は大丈夫?」)ではない。

 

最後に、

今後、文子さんは、アメリカの様々な夫婦や女性にインタビューをして、皆さんにご紹介したり、
座談会の宿題をアメリカにお持ち帰りになり、再会する際に新たな形で触発し合いたい、と考えてくださっています。

これからも、女性だけが輝く社会ではなく、「男性も女性も共に輝く社会」のために、
男性・女性問わず、テーマにご興味のある方々にお集まりいただき、ご意見をお伺いする機会を創っていけたらと考えています。
業界を越えたサポートグループのようなコミュニティになりましたら幸いです。

皆様のご意見をお待ちしております。

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